編成について


ブラスバンドの編成はそれぞれのバンドの事情で多少のぶれはありますが、世界的には28人で1編成になる共通編成での演奏を行っています。

この28人編成というのはイギリスの各種ブラスバンドコンテストで利用される編成で、大昔(100年から150年前)から編成が定まっているため、次の表のとおりの編成で、作曲された楽曲がたくさんあります。

分類 パート名 人数 記譜法 楽器本来の調性
Cornet Soprano Cornet 1 変ホ長調ト音譜表 (G Cref in E flat) 変ホ長調(in E flat)
Principal Cornet(Solo Cornet) 1 変ロ長調ト音譜表 (G cref in B flat) 変ロ長調(in B flat)
Assistant Principal Cornet (Solo Cornet) 1
Tutti Solo Cornet 2
Repiano Cornet 1
2nd Cornet 2
3nd Cornet 2
Horn Flugel Horn 1
Solo Tenor Horn 1 変ホ長調ト音譜表 (G cref in E flat) 変ホ長調(in E flat)
2nd Tenor Horn 1
3nd Tenor Horn 1
1st Baritone 1 変ロ長調ト音譜表 (G cref in B flat) 変ロ長調(in B flat)
2nd Baritone 1
Trombone 1st Trombone 1
2nd Trombone 1
Bass Trombone 1 ハ長調ヘ音譜表 (F cref in C)
Euphonium Euphonium 2 変ロ長調ト音譜表 (G cref in B flat)
Bass E flat Bass 2 変ホ長調ト音譜表 (G cref in E flat) 変ホ長調 (in E flat)
B flat Bass 2 変ロ長調ト音譜表 (G cref in B flat) 変ロ長調 (in B flat)
Percussion Percussion 3 楽器による 楽器による
合計 28  

ここで、つい最近私が気づいた、やや高度ながら面白い事実を披露しましょう。金管楽器にはベルと呼ばれる「ラッパ」な部分があります。金管楽器から出てくる音はベルの大きさや、管の太くなり方で変わってきます。一般に大きなベルの楽器はより大きな音が鳴ります。

金管楽器で使用される楽器のベルのおよその大きさは次の表のとおりなのですが、これをさまざまな角度から分析してみます。

楽器名 ベルサイズ 楽器名 ベルサイズ 楽器名 ベルサイズ
Cornet 120mm Flugel Horn 150mm Tenor Horn 200mm
Baritone 240mm Trombone 210mm Bass Trombone 240mm
Euphonium 300mm E flat Bass 480mm B flat Bass 480mm

これを音色の太さでグループ分けし、合計したものが次の表です。

音色の太さ 楽器 ベルサイズ合計
比較的繊細 コルネット(10) 1200 mm
普通 フリューゲルホーン(1)、テナーホーン(3)、バリトン(2)、トロンボーン(2)、バストロンボーン(1) 1890 mm
比較的太い ユーフォニアム(2)、バス(4) 2520 mm

これで何がわかるかというと、音色のバランスがわかります。全員が同じ力量で演奏した場合、繊細な音色を普通の太さの音色がゆったりとくるんで、その外側をしっかりと太い音色に抱きかかえられるというバランスのよい聞きやすい音色であることを示していると考えられます。また、それぞれのグループ間のベルサイズ合計の差もおよそ600~700mmと均等な配置になっており、無駄のないバランスの取れた編成であることを示していると思われます。

よくみてみると、この配置は音域に従っており、理想的な音量配分とされるピラミッド型に、各音域の音量がバランスよく割り当てられていることを示します。

現在の主流である舞台配置の左右の位置という面から見てみましょう。

位置 楽器 ベルサイズ合計
下手(客席から見て左) コルネット(10) 1200 mm
舞台中央(正面) フリューゲルホーン(1)、テナーホーン(3)、バス(4) 2670 mm
上手(客席から見て右) ユーフォニアム(2)、バリトン(2)、トロンボーン(2)、バストロンボーン(1) 1740 mm

中央の配分が圧倒的に多いです。音の中心をきちんと舞台中央に配置していることを示します。中央が左右の音量に負けると音の発生源が左右に分離したように聞こえ、ひとつの演奏になりにくくなります。バランスのよい編成であっても、きちんとひとつになって聞こえなければ何を演奏しているのかわからないということを考えると、きわめて合理的な配置ではないかと思います。

左右のバランスを見てみましょう。上手と下手とでは上手側のほうが大きくなっています。「これで音の位置が上手側にずれて聞こえるのではないのか?」という心配が出てくるのではないかと思うのですが、これは楽器の特性を考えると妥当なものではないかと考えられます。なぜかといえば、下手側コルネットはすべて前に音が出てくるのに対し、上手側のバリトンとユーフォニアムは奏者の右上に向かって音が出ます。コルネットとは向かい合って座るため、バリトンとユーフォニアムの音は舞台後方に向かって飛んでいき、反射して、客席には全体に広がって聞こえます。これにより2パートが下手側にいながら中央にいるように聞こえ、中央と下手の両方に効果(ベルサイズ)を再配分してみなければなりません。ユーフォニアムとバリトンの楽器特性を受けて再計算すると、

位置 楽器 ベルサイズ合計
下手(客席から見て左) コルネット(10) 1200 mm
舞台中央(正面) フリューゲルホーン(1)、テナーホーン(3)、バス(4)、(バリトン(2)、ユーフォニアム(2))÷2 3210 mm
上手(客席から見て右) (ユーフォニアム(2)、バリトン(2))÷2、トロンボーン(2)、バストロンボーン(1) 1200 mm

というように見事にコルネット側の合計と一致します。つまり左右のバランスも適切であることを示しているのです。

これらの事実はブリティッシュスタイルのブラスバンドの編成が音響的に完成の域に到達しているということを示すと言えるでしょう。そのようなブラスバンドの音色を聞いてみませんか?


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